北朝鮮を知りすぎた医者

ノルベルト・フォラツェン / 草思社 / 2001/05/18

★★★

まとまりがない

 著者はドイツのNGO、緊急医師団〈カップ・アナムーア〉の一員として1999年7月に北朝鮮に入り、火傷の患者のための皮膚を提供したということで有名人となったが、2000年10月にオルブライト米国務長官の同行記者団を平壌市内に案内したことから国外退去命令が出された、という医者。本書は滞在時につけていた日記で、日本で最初に刊行されるという。まとまりのない日記であり、もっとちゃんとした編集作業が必要である。他の国でまだ出版されていないのは、そのせいなんじゃないかと疑ってしまう。

 とは言ってみたものの、それ以外の可能性もある。巻末の「付記・北朝鮮からの強制退去後の活動」では、いま韓国に住んでいる著者が、「私はときどき自分がまだ北朝鮮にいるような錯覚に陥ることがある」と書いている(253ページ)。「太陽政策」が至上命題となっている韓国では、北朝鮮の批判(というよりも現状報告)がタブーとなっており、新聞記者に何を言ってもそれが新聞に載らないのだという。そうだとすると、本書のような北朝鮮の人々の悲惨な現状が描かれた本の、そこそこのサイズのマーケットが存在する国は、世界で日本だけなのかもしれない、と思い当たった。

 それならば本書も大切に扱わねばならないのだなと思う。たとえ読むに耐えない「ポエム」が随所に挿入されている、脈絡のない日記であっても、である。本書に描かれている北朝鮮の住人の様子はほんとうに痛々しい。

 なお、『南京の真実』は、いわゆる「南京大虐殺」のときに南京市内に住んでいたドイツ人実業家がつけていた日記。ジャーナリストでない外国人の報告には、中立性と客観性の点で少しばかり重みを付けたくなる。

2001/6/14

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