病気はなぜ、あるのか

進化医学による新しい理解

Why We Get Sick: The New Science of Darwninan Medicine

ランドルフ・M・ネシー、ジョージ・C・ウィリアムズ / 新曜社 / 2001/04/25

★★★

まだわからないというべきか

 「病気」という現象に進化論を適用して理解する試みを「ダーウィン医学」"Darwinian Medicine"と呼んで広めようというプロモーションの書。「発熱は身体の防御反応なんだから、無理に解熱剤で熱を下げるのはよくない」というタイプの、病気の症状を人間の身体と病原体の間の戦いとして捉え、ホスト/パラサイトの軍拡競争という論点を視野にいれるのが1つ。さらに、「風邪をひくと咳が出るのは、空気感染をするウイルスの適応である」というタイプの、病気の症状を病原体の適応として理解するというのが1つ。さらに、病原体とは関係のない、人間の身体そのものが不調をきたすタイプの病気(老いも含む)を、進化論的な観点から理解するというのが1つ。こういった言説をたくさん集めている本だが、とうぜんながらまだあまり多くのことはわかっていないので、問題提起の本という感じになっている。『パラサイト・レックス』はホスト/パラサイトの関係に焦点を当てた本だったが、こちらはそのような進化論的フレームワークを医学/医療という実践的な活動に結び付けようとする試みである。

 医者や医学研究者が、こういった観点から新しい洞察を得るということは十分にありそうな気がする。ただ、それを実際の医療に全面的に取り入れるのは時期尚早のような気がする。そういう洞察をもとに行われる研究が徐々に増えていって、ゆっくりと転換していくのが望ましい。治療をする側ではなく受ける側の人間としては、やっぱり「漸進的なテクノロジーの進歩」にそれなりの信頼を寄せているんだなぁと、本書を読んで改めて思ってしまった。

 治療を受ける側が、自分の体に起こっていることをどういう風に理解するか、という点でのインパクトは非常に大きいだろう。新しいタイプの代替医療が出現するかもしれない。

2001/6/21

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