地球温暖化の政治学

竹内敬二 / 朝日新聞社 / 98/06/25

★★★

散漫な印象のある報告

 著者は朝日新聞の科学記者。1997年12月に京都で行われた気候変動枠組み条約(温暖化防止条約)第3回締約国会議にいたるまでの、温暖化を防止するための国際的な協力体制の「政治学」に焦点を当てた本である。というふうにまとめると面白そうに聞こえるが、この本はまるであちこちに書かれたばらばらの記事をそのまま並べたという感じの散漫な内容だ。

 単純に文章力と構成力が欠けているということもできるが、著者にこの「政治学」を見据える眼力がないと言うこともできそうだ。立脚点が固定されておらず、ふらふらとしている。著者が何らかの政治的見解を持っていることはたしかである。産油国が議事進行を遅らせることを政治的な妨害であると示唆しておきながら、議長がどさくさにまぎれて、挙手している産油国の代表を無視して決議してしまうことを何かしら英雄的な行為であるかのように示唆する。しかし、このような記述の傾向の背後にどのような基盤があるのかは明確に説明されない。全体としての印象は、新聞の政治記者の原稿に似ているというものだ。例の、何々派の何議員が今日何時に何々派の何議員と会った。何々についての話し合いが持たれたと思われる。みたいなやつ。

 タイトルに「政治学」を入れるという発想はまったく正しいと思う。しかしこの本が本格的に論じているのは、一連の国際会議における各国代表の取引である。他国は難しいとしても、せめて日本国内だけについても、この件に関する意思形成の過程をもうちょっと詳しく突っ込めなかったのだろうか。おそらく著者は、そもそもそんな過程はないのだと言いたいのだろうが、それは話は逆で、ジャーナリストが調査を行った結果として過程が浮かび上がってくるのである。言い替えれば、ジャーナリストはプロセスを発見する、と。

1998/6/17

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