新しい歴史教科書

西尾幹二 / 扶桑社 / 2001/06/10

★★★

判断不能

 「自由主義史観」なるものを主張する「新しい歴史教科書をつくる会」の作った中学用の歴史教科書。同時に『新しい公民教科書』も検定を通り、扶桑社から市販された。

 この教科書は、検定に合格するまでのプロセスでもすでに大きな反響を呼び、特に韓国と中国から政治的なプレッシャーがかけられたことが注目を集めた。反対勢力からの強烈なキャンペーンもあって、ひょっとしたらこの教科書は大変な内容になっているのではないかと思っていた人は、本書に目を通して拍子抜けしたものと思われる。予想に反してずいぶんと穏当な内容で、ところどころに「やっとるやっとる」というような記述はあるものの、この教科書を実際に使用する中学生が気づいてどうこう思うようなレベルの話ではなさそうだ。ガチガチのシンパはそのことにかえってがっかりしたかもしれないが、大勢の印象は、「これにケチを付けていた人たちは大人げない」というものだったのではなかろうか。それを狙ったんだとしたら、うまいやり方ではある。

 なお、私は他の教科書に目を通したことがないので、本書の内容を客観的に評価することはできない。そもそも、中学生が学校で配布される教科書を真面目に読むとは思えない。また、教科書の記述がどうであろうとも、よっぽど人生を捨てた教師でない限り、教師の解説が記述をオーバーライドするに決まっている。そういうわけで「教科書問題」の論の立て方そのものに私はかなりの不信の念を抱いている。

 あと個人的に、「大人になってから」網野史学に触れてびっくり仰天したという経験が尾を引いているというのもある。それで学校教育への信頼が低下した、ということを言いたいわけではない。「大人になってから」びっくりする方が、最終的な効果が高いんではないか、と言ってみたいのである。まあしかし、「リベラル」の主張としては、高校を卒業したら一切活字に触れなくなる人が多いので、中学高校のうちに身体的に教えこんでおくべきだというのが典型的なパターンのようではある。

 なお、西尾幹二編の『新しい歴史教科書「つくる会」の主張』を読むと、この教科書がずいぶんと穏当なものになっている理由の一端らしきものがわかる。

2001/6/28

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