山の社会学

菊地俊朗 / 文藝春秋 / 2001/06/20

★★★

これは普通の本

 著者は新聞記者出身。ヒマラヤ登山の経験もある登山家である。その人が、ここ数十年の日本の登山のあり方の変遷について書いたエッセイ。まあ、ごく普通の内容。

 第3章「登山者層について」は、登山人口の高齢化を扱っている。日本山岳会の会員の2000年現在での平均年齢は59歳だそうだ。登山の講習会を行っている、とある人の分析によると、中高年の登山者のうち、定年退職後に新たに登り始めた人が70%、カムバック組が20%、登山を継続してきた人は数パーセントとのこと。この2つの数値は、指し示している現象も信頼性も異なるけれども、「登山への新規参入は若年層に少なく、中高年に多い」ということは言えるのだろう。マリン・スポーツの人口は、対照的に若年層で増えているはずである。

 戦後日本の登山絶頂期には、こんなことになるとはほとんど誰も予想していなかったろう。今後、高年齢化が心配されるもう1つの分野がオンライン・ロールプレイング・ゲームである。サイバースペースの未来は、「トガったところのある若者ハッカーが縦横無尽に活躍する」という通俗的な像よりも、「非生産的な人々が中毒になってつなぎっぱなし」という通俗的な像の方に近くなるかもしれない。楽しみである。

2001/7/5

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