論争・少子化日本

川本敏編 / 中央公論新社 / 2001/05/25

★★

まとまりのない印象

 「中公新書ラクレ」の「論争」シリーズ第3弾(他のものは、『論争・中流崩壊』『論争・学力崩壊』)。少子化と高齢化を扱った文章を集めている。ちなみに、この読書メモで扱っている少子化に関連する本人口問題に関連する本

 本書に収められている文章のうち、まっとうな人口学をベースにしているものは非常に少なく、ほとんどは主観的な印象をベースにした単なるエッセイか、高齢化と少子化が進展する社会についてのイデオロギーの表明である。

 興味深かったのは、小川長宏の「長引く景気不安が出生率を低下させる」。戦後ベビーブームから第一次石油ショックまで(A)、第一次石油ショックから90年代まで(B)、90年代前半(C)、そして90年代後半(D)の4つの時期で、出生率の低下のメカニズムが異なっていると述べている。(A)については、女性が第三子目を産む確率が低下したこと。(B)については、結婚確率が低下したこと、(C)については、第一子目を産む確率が低下したこと、(D)については、第二子目の出生間隔が広がったことだという。84ページから引用。

……このような結論は、晩婚化・未婚化が今日の日本における少子化の重要な一要因であることに変わりはないものの、もはや最大要因ではないと言えよう。[原文ママ]
このように、日本の出生メカニズムの中枢部分が、九〇年代において有配偶率の動向から有配偶出生率の動向に次第に移行しつつあり、その中でも特に出生のタイミングの遅れが合計特殊出生率の低下に寄与し始めていることを考えると、七〇年代ごろから主に出生タイミングの遅れによって出生低下が見られるEU諸国の出生メカニズムに次第に接近していると推測することができよう。言い換えれば、最近の日本では、晩婚化・未婚化による少子化社会から、有配偶出生率の減少による新少子化社会へと転換しつつあるのかもしれない。

 この結論がどれほど妥当なのかはよくわからないのだが、妥当だとすれば、景気の回復が出生率にダイレクトに効いてくる可能性はたしかに高そうだ。

 イデオロギーの面については、高齢化が進展し、人口が減っていく日本社会を前向きに捉えるかどうか、ということに過ぎない。大局的に見れば、食料やエネルギーなどのリソースの上限に達してにっちもさっちも行かなくなる前に、人口の増加傾向が「自然な形」で収まったことを慶賀すべきだと思うのだが。

2001/7/5

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