スピリチュアル・マシーン

コンピュータに魂が宿るとき

The Age of Spiritual Machines: When Computers Exceed Human Intelligence

レイ・カーツワイル / 翔泳社 / 2001/05/18

★★

ビジョナリーによる未来予測

 著者のレイ・カーツワイルは有名な発明家・起業家。1990年に『インテリジェント・マシーンの時代』という本で行った10年ほどのスパンの未来予測がかなり当たったという実績がある。その人が、発行年である1999年を起点として、10年後、20年後、30年後、100年後のコンピュータ・テクノロジーのあり方を予測している第III部が本書の要である。

 訳者による前書きから推測するに、それ以外の理論的な部分には奇怪な記述が多かったようで、あまりに変なところは翻訳の際に削除されたようだが、残っている部分にもそれほど注目すべきところはない。『サイエンス21』が科学者によるまっとうな予測本だったのに対し、こちらはビジョナリーによる予言本という性格が強い。

 一番議論を呼ぶのは、本書のタイトルが示唆している人工知能の発展と、コンピュータへの人格の「ダウンロード」だろう。著者は『順列都市』の前半部やその他のSF小説に描かれているようなコンピュータ内人格の世界が実現するとまじめに考えており、2029年までにはチューリング・テストに合格するような高度な人工知能が多数出現し、2099年には人格のダウンロードが可能になっているとしている。また、2029年までには、テクノロジーを利用した人体の「強化」がさまざまな分野で行われている。

 それにしても、ネットワークを介してのコミュニケーションが当たり前になるだろうと思われる未来のことを考えると、チューリング・テストという概念の先見の明に改めて驚く。高度な精神機能の有無は応答から推測するしかないという話については『The Parrot's Lament』の項を、チューリング・テストには統計的な概念が含まれるようになっていくという話については『ケンブリッジ・クインテット』の項を参照。

2001/7/19

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