心の潜在力 プラシーボ効果

広瀬弘忠 / 朝日新聞社 / 2001/07/25

★★★★

プラシーボ効果についての啓蒙書

 プラシーボ効果についての啓蒙書。今世紀後半に「発見」されたプラシーボ効果の事例をいろいろと紹介し、そのメカニズムを推測し、医療の現場にとってのインプリケーションを論じ、伝統的医療、心理療法、宗教などと結び付けて論じるという流れである。良く書かれている入門書なのだが、プラシーボ効果の背後にあると考えられる「人間の持つ自然な治癒力」みたいな概念を賛美する姿勢が強すぎるのが少し気になる。

 なお、プラシーボ効果の概念は、人間に限らず生物を対象とした行動学やその他の実験科学の実験計画法に大きな意味を持っている。本書では主に医療の現場での実践的なインプリケーションが取り上げられているが、広いコンテキストではこれは「実験者効果」として知られているものの一部である。そしてこれはあまり重視されない問題なのだが、実験者が必死になって実験者効果を排除する実験計画を立てると、もともとは小さいが、プラシーボ効果によって増幅されるタイプの効果や能力が検出できなくなってしまうということがありえる。これは分野とトピックによっては、かなり重大な問題となる。

 なお、「あとがき」では、"New England of Journal of Medicine"の5月24日号に、プラシーボ効果を扱った研究のメタ分析を行った論文で、「一部の例外を除いて、プラシーボ効果は存在しない」という結論が出されていることを紹介している。その論文のアブストラクト。その例外とは「継続的な主観的な結果」と「痛みの処置」の2点ということのようだ。

2001/8/3

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