日本の戦争責任をどう考えるか

歴史和解ワークショップからの報告

船橋洋一編著 / 朝日新聞社 / 2001/08/05

★★★★★

多様な観点の入ったワークショップの記録

 このタイトルと編著の船橋洋一(『同盟漂流』『あえて英語公用語論』)という固有名詞から、鬱陶しいものを予想する向きもあるだろうが、これはまっとうな本だった。タイトルと、帯にある「「あの」歴史教科書について悩んでいる全国のお父さん、お母さん、そして先生たちへ 本書の11カ条をお読みください」という言葉はミスリーディングで、本書はアジア・パシフィック地域の「歴史和解」の必要なケースを7つ取り上げた「歴史和解ワークショップ」なるもののプロシーディングスである。船橋洋一はこのワークショップの主催者だったようで、本書に収録されているこの人の手による解説は相変わらずよくないのだが、スポンサーの米平和研究所(USIP: the United States Institute of Peace)東京財団は、ともにこの人の個人的コネである。

 取り上げられている7つのケースは、「南北朝鮮」、「日韓」、「カンボジア」、「東ティモール」、「台湾二・二八事件」、「日中」、「オーストラリア・アボリジニー」。これらのケースについて、安全保障問題などを専門とするさまざまな国籍と拠点のジャーナリストと実務家たちが論じている。まあ財団主導の国際的ワークショップとしては標準的な内容ではあるのだろうが、そういうものの記録が気軽に手に取れる本の形になることはなかなかない。なお、財団主導の国際的ワークショップであるから、とうぜんながら内容はリアリスティックなものとなっている。朝日新聞社がこんなものを出して大丈夫なのかと少し心配になるぐらいだが、これは朝日新聞社をバカにしすぎた見方だろうか。

 日本のリベラルがこういうリアリスティックな議論に対抗するのは容易なことではなく、私に思いつくのは、本書のような立場を「西側先進国中心のエスノセントリズム」と呼んで相手にしない、というような戦略ぐらいしかない。実際、本ワークショップの参加している「和解の専門家」たちの言葉には、西洋の事例(アイルランド、ドイツ、また西洋ではないがパレスチナ)から得た知見を、アジア・パシフィックにも適用してみましょう、という態度が潜んでおり、それは帯で触れられていた「歴史和解を考えるための一一カ条」にも顕著に表れている(ただしこれは著者が個人的に考えついたリスト)。これは結局はポパー/ソロス路線の「開かれた社会」に行き着く話であり、これに正面から反論するのは実に難しい。

2001/8/12

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