手記 潜入捜査官

高橋功一 / 角川書店 / 2001/08/05

★★★

ちょっと中途半端だが

 著者は元大阪府警巡査部長。拳銃密売情報を入手するために暴力団組織に潜入していたアンダーカバー・コップによる手記。旅券法違反、電磁的公正証書原本不実記録、同供用、出入国管理及び難民認定法違反、犯人隠避教唆、覚醒剤取締法違反の容疑で起訴され、一審判決は懲役6年の求刑に対して懲役4年半の実刑となった。著者の主張は、これらの犯罪はいずれも捜査活動の一環として行ったことであり、行き過ぎの面もあったかもしれないからその点では反省しているが、その後の府警の対応には納得できないというもの。

 本書は進行中の裁判のための牽制の役割を持つ告発本。裁判とは関係ないが同種のものとしては、『裏切り』『盗聴 ここまでやっている!!』などがある。このタイプの本のつねとして、記述の信憑性は割り引いて受け取らなくてはならない。ただ基本的な問題については疑問の余地がない。大阪府警は、インフラストラクチャを構築しないまま潜入捜査を行い、問題が生じたときにトカゲの尻尾切りを行ったということだ。著者が繰り返して主張するように、こんな状況だったら警察官は安心して活動を行えないだろう。日本の話としても、公安警察のスパイ活動はこれよりもずっとマシだと思われる。要するに、大阪府警はノウハウがないまま公安警察の領域に足を踏み入れて失敗したということだと思われる。

 なお、本書は読みにくい。個々の文章は別に悪くないのだが、段落とか章単位の意味がなぜか取りにくいのである。著者が元警察官であることが理由なのか(つまりお役所文書に慣れている)、告発本という性質が影響を与えているのか(何らかの事情からはっきりと書けず、遠まわしに示唆している部分を、部外者である読者が感知できない)は不明。興味深い文体の事例として。

2001/9/8

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