インターネット不況

Coming Internet Depression,The

マイケル・J・マンデル / 東洋経済新報社 / 2001/08/16

★★★

先見の明だが

 著者は『ビジネス・ウィーク』の経済エディター。本書は、アメリカの90年代後半の「ニュー・エコノミー」と呼ばれた経済成長は、インターネットともITとも本質的な関係はなく、ベンチャー・キャピタルを中心とする効率的な資本移動の結果であり、このプロセスがいったん下降線をたどり始めると、不況と呼ぶべき状況が訪れるだろうと主張する本。2001年の夏に読めば自明のことと思えるが、原書はまだハイテク不況が完全に顕在化していなかった2000年9月に出版されたものなので、先見の明があったと言えなくもない。少なくとも2〜3年前には、ニューエコノミーの駆動力は、ITとインターネットによる生産性の向上である、というような議論が堂々と行われていたわけで。時が過ぎるのはまことに速いものである。

 著者の主張は、アメリカの強みは、ヨーロッパと日本にはないベンチャー・キャピタルとそれに即応した労働者の精神のあり方にあるということである。そしてこれは次の経済成長の駆動力ともなるが、そのときにはITやインターネットはもはや主役ではなく、エネルギー産業やバイオテクノロジーなどが集中的な投資の対象となるだろうと述べる。日本でも、たとえば一時期あれほどもてはやされた携帯電話関連の企業の人気が落ち、携帯電話はすでにコモディティとなってしまったので、もう儲からないというようなコンセンサスができているように思われる。

 その他にも、著者は本書でいくつかの主張を行っているが、いずれも裏づけとなるデータや理論が貧弱なので、主張そのものの信憑性はともかく、議論の説得力はあまりない。著者がアメリカ経済の利点として挙げる、ベンチャー・キャピタルに象徴される資本と人の流動性も、ヨーロッパや日本の流動性の低さと比べて結果的にどちらが国民にとって有益なのかは、歴史の審判を待たなくてはならないだろう。

2001/9/8

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