「原発」革命

古川和男 / 文藝春秋 / 2001/08/20

★★★★

実に興味深いが、ほんとのところはどうなのか

 著者は熔融塩を専門とする学者。本書は、トリウム熔融塩を利用することで、現在のものよりもはるかに安全な原子力発電所が作れると主張する本。発電所にとどまらないトータルなソリューションを提案している。

 現在の原子力発電の問題点を1つ1つ指摘し、トリウム熔融塩を使えばそれが解決できるとするその議論の運びは非常に明解で説得力がある。炉の中でプルトニウムを消滅させることができる、小型化できる、などのいいことばかりが書いてある。当然ながら、生じてくる疑問は、そんなに良いものなのならばなぜ現在使われていないのかということで、著者はいちおうその歴史的な事情を解説している(203ページ)。簡単にまとめるならば、(1) トリウムには核分裂性がなく、ウランの方が手軽だった、(2) 熔融塩炉以外の液体核燃料炉がすべて失敗した、(3) トリウムは非軍事的な技術であるため、金が回らなかった、(4) 米国でもこの技術はオークリッジ国立研究所からあまり外に出ていない、(5) 熔融塩炉は製造業者にとって魅力がなかった、ということである。

 私は、このようなトータルなソリューションを提案できるような研究が進んでいるということをまったく知らなかった。したがって、とうぜんのことながら、このアイデアにどのような批判が寄せられているのかということも知らない。ただ、そのような事情を前提にしても、本書を読んだ限りの印象では、少なくとも実験炉には国家予算を注ぎ込んでもよいんじゃないかと思った。つまり著者はエヴァンジェリストとして有能なのである。本書に書かれている事柄が本当に実現できるのならば、素晴らしいことなので、頑張っていただきたい。もちろん、このトピックについて中立的な立場から書かれた本も読んでみたいと思った。

2001/9/16

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