遺伝子vsミーム

教育・環境・民族対立

佐倉統 / 廣済堂出版 / 2001/09/01

これは期待はずれ

 廣済堂ライブラリーなるモノグラフっぽいシリーズの1冊。ミームという概念がこのところどうなっているのかを知りたいと思って読んでみたのだが、これは期待外れだった。すでに養老孟司とか岸田秀とか吉本隆明のような症状を呈しており、「トンデモ本」に分類されるような内容。

 まあ、「ミーム」という言葉はまだちゃんと確立していないのだから、どんな意味でどんな文脈に使ってもかまわないとは言いうるだろう。しかし「遺伝子」という言葉の意味内容とそれにまつわるイメージは社会の中で確立しており、それと類比することによって、その確立した正統性を借りてきて、なんとなく正しそうなイメージをまとうという戦略はきわめて気持ち悪い。とりわけ本書のように、「ミーム」という概念を教育とか環境とか民族対立みたいな倫理・道徳に適用するのは、社会ダーウィニズムを連想させて非常に危ういように感じる。上に挙げた養老孟司とか岸田秀とか吉本隆明は、わざとひねくれて、他人からまともに受け取ってもらうことを拒否することによって、自らの言葉の存在理由を確保していると言えるのだが。

 突っ込み所はいくらでもあるが、いちいちそれを指摘するのもしんどい。本書はなかったこと、読まなかったことにするのが一番ということで。

2001/9/23

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