日本海軍地中海遠征記

若き海軍主計中尉の見た第一次世界大戦

片岡覚太郎 / 河出書房新社 / 2001/06/30

★★★★

興味深い記録

 巻末の編集部による注記を引用。

本書は、大正八年十一月十八日に、日本海軍第二特務艦隊整理部の編纂により、「非売品」として発行された『遠征記』の後半部分、片岡覚太郎海軍中主計(主計中尉)の手記を復刻したものである。編者のC・W・ニコル氏によると、現在、マルタと岩手県水沢氏でわずかにその存在が確認されているだけの稀少な文献である。本書を編むにあたって、漢字・仮名遣い・ルビ等に必要な変更を加えたことをお断りしておく。

 阿川弘之が序文を、C・W・ニコルが解説文を書いている。本書は、著者が従軍中に書いていた日誌をもとに、日本に帰ってきてからまとめたもので、日記とも戦記とも言いがたい独特の読み物になっている。著者が属していた第二特務艦隊は、第一次世界大戦時に地中海で主に船団の護送などの任務についており、その近辺のあちこちの町に入港した。とうぜん著者らは公務の隙を縫って市中見物に出かける。そういうわけで、本書は従軍記というよりも、初めての海外旅行について書かれた講談調の感想文と呼ぶべきものである。

 帯には「ここに、好奇心と正義感と自信にあふれ、偏見と悪意をもたず、鋭敏な知見をユーモアにくるんで表現する、輝かしい日本人の原像がある!!」とあるが、まあここまで持ち上げなくてもいいとは思うものの、この時期のインテリの、プロフェッショナルなライターでない一人の人間が、日本と世界をどのように見ていたかを知るための資料として興味深いだけでなく、単純に読んでいて面白い。時代背景はもちろん異なるものの、現代日本人の手による数々のWeb日記との共通点もあちこちに見られて、いやあ日本人は変わっていないんだなと思ったことだった。

 たまたま同時期に、「過去の時代の一般人(プロのライターでない人)の手による日記/手記」を復刻した本がいくつか出版されていた(数冊買ったけど未読)。何らかの新しいトレンドを表しているのだろうか。

2001/9/30

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