民主主義とは何なのか

長谷川三千子 / 文藝春秋 / 2001/09/20

★★★

ちょっと雑な部分がある

 このところ「反戦後民主主義派知識人」として活躍している著者の、民主主義とか人権といった概念に疑念を投げかける本。著者の本としては、『からごころ』『正義の喪失』を取り上げている。また『憲法改正』にも一文が収録されている。

 たまたま最近読んだ『デモクラシーの論じ方』は、民主主義/デモクラシーを現象学的に扱う本だったが、こちらは歴史を遡って発生のプロセスを探るというアプローチ。そのアプローチの範囲内での、ホッブスとロックの(普通とはちょっと違う)位置づけなどは面白かったけれども、個人的には、このアプローチそのものの実効性がよくわからない。過去がどうだったとしても、現代の日本にそれが適用できるかどうかはまた別問題であり、その点では『デモクラシーの論じ方』のアプローチの方がずっと意味があるように思った。

 このところ、戦後民主主義に対する反動として、人権や民主主義といった概念を批判するのがはやっているけれども、「アホな人が言っている人権や民主主義」を批判してもなんにもならないことはわかり切ったことである(『人権を疑え!』など)。本書のアプローチは、基本的に、この「アホな人」の範囲をロックやアメリカの独立宣言の作成者らまでに拡大したということに過ぎない。それよりも、われわれがなるべく「アホな人」にならないようにして考えたときの人権や民主主義が、どのようなシンタックスとセマンティクスを持っているかを抽出する努力の方がずっと生産的であろう。

 あとまあ、『からごころ』とか『正義の喪失』にあった、批判的言葉を発するときの最低限の上品さが失われているように見えるのが残念でならない。著者に限らず、長い間苦労してきた末に、ようやく自分の時代が来たと思っている人は少なくないはずだが、そのうちの多くがちょっとはしゃぎすぎのように思える。

2001/9/30

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