「構造改革」という幻想

経済危機からどう脱出するか

山家悠紀夫 / 岩波書店 / 2001/09/21

★★★★

読みやすい

 著者は第一勧銀を経て学者になった実務経験者。本書は小泉首相が進める「構造改革」を批判する本。『日銀不況』と同じく、小泉内閣の支持率の高さに危機を感じて書かれた本だが、こちらは「構造改革」そのものに焦点を当てている。

 内容は普通だが、わかりやすく書かれており、批判派の立場を理解するための入門書としてお勧めである。ところで私は「構造改革推進派」のまっとうな本を読んだことがないような気がしてきたので、今後探すつもり。

 なお個人的には「経済的弱者」とは言えない状況にあるので、経済合理的に考えるならば私は構造改革に(それがどんなものであれ)賛成すべきである。しかし実は旗幟を鮮明にするほどの利害関係もない。似たような境遇の人は少なくないのではないだろうか。ここ10年間ほどのIT化の流れにうまく乗って、自らのアウトプットを市場原理にさらして労働している人。資産家ではないし、ある意味で市場主義の美味しいところを先取りしてしまっているので、構造改革(それがどんなものであれ)による恩恵はそれほど大きくはなりそうにない。一方、消費者としては、ここ10年ほどでさまざまな規制緩和の恩恵をずいぶん受けたように思うが、長期的にどうなるかは未だ定かではない。

 実際、「個人」として構造改革を推進する切実な動機を持つ人は、世の中にごく少数しかいないはずだ。小泉内閣の支持率の高さはやはり合理的ではない。まあそれが政治というものか。

2001/10/14

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