現代思想の困った人たち

小浜逸郎 / 王国社 / 98/02/25

いったい何をやっているのか

 基本的に、オウム真理教をまつわる吉本隆明の発言を擁護する人たちへの反論を集めた本なのだけれども、どうやら『樹が陣営』という同人誌っぽい雑誌に連載していた文章をまとめているらしく、それだけにものすごくみみっちい論争をやっているという感じがする。だいたい芹沢俊介を批判していったいどうなるというのだ? という感じ。

 この本の一番こっけいなところは145ページにある。「私は、自分では、最低二十冊本を出さなければ一人前ではないと勝手に思ってきた。実はたまたまこれを書いている最中に二十冊目が上梓される運びとなったので……」。まあそういう思いは別にいいとして、この『現代思想の困った人たち』も出版された時点で一冊と数えられるのだろうなと思うと……。

 個人的には、誰か「思想家」がいて、その「思想家」の姿勢が批判の対象になるという時代はとっくの昔に終わっていると思う。こう言えばいいか。誰か「思想家」の一貫性の欠如が(その人が間抜けだということ以外の)何らかの意味を持つ時代は終わっている。というか、同じ穴の狢の人にしか、それは意味を持たないのであって、小浜が、いかに芹沢の文章はこのように批判できると主張しても、読者は何の痛痒も感じないのである。芹沢の本を実際に買ってうんざりした人が、その時点で痛痒を感じるだけで。

1998/3/27

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