立花隆先生、かなりヘンですよ

「教養のない東大生」からの挑戦状

谷田和一郎 / 洋泉社 / 2001/12/07

★★

世代ギャップを感じた

 著者は1976年生まれの、東大文学部を卒業したばかりの人。立花隆の著作のガードの甘いところを指摘する批判本。似た本に『立花隆の無知蒙昧を衝く』があったが、あちらは(特に後の方が)奇怪だったのに対し、こちらは素直で地道である。

 私は本書で取り上げられている著作のほとんどを読んでいないのだが、引用されている文章を見ていると、さすがにやばいとは思った。というよりは、そのやばさが90年代に入って立花隆の著作に手を出さなくなった理由の1つなので、本書の中心的な主張の1つ、つまり、この人は文系の人の科学の知識の欠如についてさんざん嘆くわりには、穴が多いという批判に異議はない。ただ、これを含めた数々の問題点についてどう思うかという点での彼我の差に「世代間ギャップ」を感じた。

 まず第1に、立花隆はもともと「知の巨人」ではないんです。本書の著者は、立花隆が「知の巨人」であるという認識から出発して、本書を執筆する過程でそこから脱却するわけだけれども、70、80年代からの読者にとっては、立花隆はジャーナリストとしての地位を確保した上で「中年になってから新たな勉強を始めた人」なんである。これは偉いことだと思う。

 第2に、本書のもう1つの重要な指摘である、立花隆の考え方にニューエイジ/ニューサイエンスが入っているという点について。立花隆は決してニューエイジのチャンピオンではなく、そのタイプの本格的な人たちの中に置いたら、相対的には「科学」寄りと言えると思う。メインストリームの科学者に話を聞きに行くだけ偉い(要求水準が低すぎる?)。本書の著者は、立花隆の中にニューエイジ/ニューサイエンスを「発見」したわけだけれども、それだけニューエイジ/ニューサイエンスが勢いをなくしていて、目につかなくなっているということなのだろうか。まあこれは喜ばしいことかもしれない。

 本書に引用されている文章や、最新作の『東大生はバカになったか』を読むと、たしかに本書のような素直で地道な立場からの批判は妥当かつ必要かと思った。この人が「知の巨人」と呼ばれてしまうような状況がいつのまにかどこかにできあがっていて、私はそれに気づいていなかったということのようだ。でも、この人は知の巨人でもなければ、学者でも思想家でもなく、ジャーナリストなのだ。著者は、ジャーナリストとは関係のないいくつもの資質を立花隆に求めているように見える。また、著者が非難している資質のいくつかは、むしろジャーナリストとしてはアドバンテージであるかもしれない。

2001/11/18

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