橋本治が大辞林を使う

橋本治 / 三省堂 / 2001/10/20

★★★

趣旨に合ってないが

 本書はどうやら『大辞林』のプロモーション本で、三省堂が橋本治に「タイトルに『大辞林』って入っている本を適当に書いてください」と依頼してできあがったという感が濃厚。あちこちで無理に『大辞林』につなげようとしているが、基本的には「文体」について書いている。この読書メモでは、著者の本は他に『「わからない」という方法』『宗教なんかこわくない!』を取り上げている。

 たまたま立ち読みで敬語について論じている箇所が目にとまり、感銘を受けたので買ったのだが、面白いのはその箇所だけだった。著者の論を簡単に紹介すると、「うざい」という言葉は「なにかが過剰に接近しすぎて不快である」という意味であり、このような言葉がはやっているのは、距離の調節という機能を持つ敬語が待望されているということを示唆する、ということ。著者は、敬語が「上下関係」という文脈で論じられることが多い現状を批判し、敬語の機能は話者と他者の間の距離を調整することなのだという視点から、敬語をうまく使えるようになれと若者に教示する。この人は嫌味にならずに若者に教訓を垂れる能力で群を抜いている。

 橋本治のエッセイ/評論に特徴的なのは、ユーモアの感覚が徹底的に欠如していることである、と思った。読者は「この人は受けを狙おうとしていない」と直観的に見抜き、素直に教えを受け入れるのではなかろうか。もちろん、「ユーモアの感覚を欠如させる」というユーモアの精神がその背後にはある(と思いたい)。理想型の1つ。

2001/12/9

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