イスラムVSアメリカ

「これから」を読み解く5つの視点

田中宇 / 青春出版社 / 2001/11/10

★★

これでいいのか?

 著者がメール・マガジンとして配布してきたエッセイの中から、イスラムとアメリカに関係するものを選んで加筆修正したもののようだ。だから1冊の本としてのまとまりはない。2001年9月11日に発生したアメリカへのテロリズムは日本にも大きなインパクトを与え、多数の関連本が出版されている。この読書メモでは、このタイプの本を初めて取り上げることになる。

 これは飽くまでも「エッセイ」であって、ジャーナリズムではない。親アラブ、反イスラエル色を明確に打ち出したユダヤ陰謀論的なプロパガンダに近い内容だった。そのこと自体は別にいいんだが、メール・マガジンの読者が16万人いるという記述に少々驚いた。

 私はメインストリームのメディアをほとんど見ていないので、9月11日のテロリズムとそれに続く戦争が、日本国内で一般にどのように受けとめられているのかをよく知らないのだが、ひょっとして、反米・嫌米的な態度をとることがファッショナブルになっているんじゃなかろうかという懸念を抱いている。いまはそうでないとしても、今後、その方向に行く可能性はきわめて高い。もともと反米だった左翼と、1990年代の新しいナショナリズムの主張が重なり合う領域だからだ。

 そこで1つ主張させてもらう。われわれ日本人にとっての太平洋戦争の教訓は、「勝ち馬に乗れ」、「アメリカに歯向かうな」ということだったはずだ。現在の反米・親イスラムの論調は、前世紀前半のアジアに対する肩入れと、いろんな面でパラレルである。ここは慎重にも慎重を期すべきだ。ヨーロッパに味方がいることが何の保証にもならないことを思い出すべし。

2001/12/9

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