9.11

アメリカに報復する資格はない!

9.11

ノーム・チョムスキー / 文藝春秋 / 2001/11/30

★★★★

雄弁

 チョムスキーによる政治関連の書籍。2001年9月11日のアメリカに対するテロリズムを受けて、さまざまな国籍のジャーナリストたちが主に電子メールを通して行ったインタビューを収めたパンフレット形式の本を翻訳したもの。チョムスキーは、言語学者としての側面はともかく、政治思想家としては概ね「トチ狂っている人」として扱われている(少なくともアメリカでは)と言われているが(もちろんそうでないと言う人もいる)、本書の本人の言葉では、9月11日以降、ヨーロッパだけでなくアメリカでも彼の見解に関心を示す向きが増えてきているとのこと。

 チョムスキーの考え方は昔から一貫していて、要するにアメリカは侵略国家であり、外国におけるテロリズムを支援してきたのであるという極左リベラルなハト派である。9月11日の事件は「だから言っただろ」と言う恰好の機会を提供したことになる。『戦争を記憶する』の項で書いたが、こういうスタンスが90年代のアメリカでほんとうにアンファッショナブルになったことは、アメリカ映画を見ていればよくわかる。

 翻訳が少し不安なのだが、彼のカリスマと巧妙なレトリックは十分に味わえる。これが文藝春秋という、どちらかといったら「保守」に属する出版社から翻訳出版されたことを記憶しておこう。『アメリカが本当に望んでいること』"What Uncle Sam Really Wants"は現代企画室から出版されていたのである。

2001/12/9

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