The Future of Ideas

The Fate of the Commons in a Connected World

The Future of Ideas

Lawrence Lessig / Random House / 2001/01/01

★★★★

興味深いのだが無理っぽいか

 『CODE』のローレンス・レッシグの2冊目。前著で展開されていた「素朴なリバータリアニズムに対する批判」と基本的に同じ観点から、社会全体のイノベーションを促進するためには、法的枠組みとコマースによる強制に対する意識的な介入が必要であると論じる。著者は、インターネットの成長とそれに伴うイノベーションを可能にしたのはインターネットが持っていた本質的な自由さであるが、その自由さを支えている仕組みは変更不可能な必然的なものではなく、昨今の法律やコマースの介入によってすでに変化が生じ始めているとする。マーケット至上主義ではだめなのであり、適切なコントロールが必要であるという論点は『CODE』と共通しているが、本書では副題にあるように共有地(commons)の概念を重視し、それを適切に確保することが社会におけるイノベーションの総量を最大化すると論じる。

 多くの部分は、インターネットの本質的な自由さがどのように実現されているかということと、それが最近どのように制限されつつあるかということを、インターネットの動向についての知識が皆無な人にもわかるように説明している。逆に、そういう話に関心を持っている人にとっては周知の事柄が多いだろう(ただし説明の仕方はラディカルなので、新鮮に思う人もいるかもしれない)。もう1つ無線周波数の割り当てのコントロールについてもかなりの分量が割かれているが、ちょっと全体像の中にきれいに収まっている感じがしない。

 さて、どうなんだろう。著者はイノベーションの源泉としてコントロールの強度/共有地などの概念を持ってきているわけだけれども、とうぜんながらイノベーションはそれ以外の要因によっても左右される。本書の論がそれらの要因を意識的に排除していることはわかるのだが、そのせいでいくつかの派生的な議論が非現実的になっているようにも思える。たとえば、1990年代後半のインターネットの急速な成長は、純粋にアメリカ経済の好調さとその一要素としてのインターネット株バブルに負うところが大きいだろう(もちろんこのバブルそのものが、インターネットの自由なアーキテクチャの産物であると著者は言うだろうし、それは本当かもしれない)。そういう複雑な因果関係の中から、共有地というテーマを取り出すというアクロバティックな試みから、新しく見えてくるものもあるし、抜け落ちるものもあるということだ。

 ただ私は、人々がコントロールされた安定状態を好む性向は、著者が考えているよりもずっと強い本質的なものなんではないかと思っている。多くの人がMSNやYahooなどのポータルのトップ・ページをスタート・ページとして設定し、その中にあるお仕着せのメニューのみを使い、少数の「コミュニティ」を訪問するという状況は、これらのプロバイダの囲い込み戦略の目標であるけれども、実際に大多数のコンシューマが歓迎する状況でもあるのではないか。そういう人々にとって、イノベーションは必ずしも完全な善ではないかもしれず、イノベーションと安定状態の適度なミックスが望ましいかもしれない。

 ただ、こういう反論が虚しく思えるのは、この著者にとって「イノベーションの量の最大化」は、自らのアジェンダを唱えるための方便なんじゃないかという疑念をどうしてもぬぐい去ることができないからだ。

2001/12/9

 『動物化するポストモダン』の項で、本書を引き合いに出して、オタク系文化のイノベーションについて論じた。なお、この本を読んで、本書は高品質な本だったと改めて思ったので、★3つから4つにアップグレードすることにした。

2001/12/21

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