それは違う!

日垣隆 / 文藝春秋 / 2001/12/10

★★★★

熱い

 『買ってはいけない』の批判本として1999年10月に刊行された『「買ってはいけない」は嘘である』に加筆して文庫化したもの。著者の本としては他に『偽善系』『偽善系II』『死の準備』(共著)を取り上げている。

 『買ってはいけない』に対する批判に加えて、環境ホルモンやダイオキシンなどのブームにも批判的に言及している。著者はどんなテーマについて書くときもかなり徹底したリサーチを行っているようだ。ただ、本書に収録されているような文章がそのアウトプットであるというのは少々複雑な気持ちになる。売文稼業として徹底していると美学を感じ取る人もいるだろうし、もったいないと思う人もいるだろう。自分がどれだけ勉強したかを世間に誇示するかのように、細かいことにまで脚注を付けて参考文献を示して、その結果読むのが面倒な分厚い本を書く人が世の中にはいるけれども、本書の著者はその対極に位置する。

 この人は、オフィシャル・サイトにおいて「説明責任」というページを設けており、すごくまっとうな態度を示している(世の中には偉い人がいるものだと思った)。このまっとうさが、ライターとしてのあまりに強力なフィルタリング能力をオフセットしていると言えなくもない。

 個人的には、食品に関する通俗説に反論する『「食べもの情報」ウソ・ホント』のような本の情報量と記述のトーンが一番落ち着く。でも『「食べもの情報」ウソ・ホント』は『「買ってはいけない」は嘘である』と比べればその社会的インパクトはずっと小さかっただろう。だから本書のような少々下品な記述で注意をひく方が、たぶんずっといいのである。

 現時点において、調査能力、スタンス、および取り上げるテーマにおいて、最も注目すべき作家の1人であることは間違いない。しかし個人的には、歳をとったせいなのか、ちょっと距離を置いて見ていたいという気持ちがある。著者の「人権」に対する感覚は、すでに日本社会で広く共有されており、近いうちに攻守が逆転するだろうと私は思っているのだが、そのときにどのように対処するかということが気になる。

2001/12/16

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