The Final Days

The Last, Desperate Abuses of Power by the Clinton White House

The Final Days

Barbara Olson / Regnery Publishing / 2001/01/01

★★★

激しい攻撃、最強のプロモーション

 著者のバーバラ・オルソンは連邦検察官出身の弁護士で、ヒラリー・ロダム・クリントンを攻撃する『Hell to Pay: The Unfolding Story of Hillary Rodham Clinton』(未読)という本を書いている。この人は、本書が印刷に回される2日前の2001年9月11日に、ペンタゴンに突っ込んだ旅客機に乗っていた。ハイジャックの進行中、司法省に勤める夫に、携帯電話を使って機内の状況を知らせていたというエピソードもあって、最強のプロモーションとなった。

 本書は、クリントン大統領のいわゆる「恩赦疑惑」"Pardongate"を中心に、彼がホワイトハウスを去る直前に行ったさまざまな怪しげな行為を情熱的に批判する本である。著者はもともとビルとヒラリーが大嫌いな人なので、その攻撃は一方的かつ徹底的で、目新しい情報はないものの、一連の問題を反クリントン陣営から見た様子のサマリーとして役に立つだろう。ちょっと冷静さを欠いているような気もするが、ペンタゴンに突っ込んだ飛行機に乗っていた人に向かってそんな突っ込みができようか?

 この「恩赦疑惑」とその前後の一連の行動には、それまでクリントン・シンパだったリベラルたちもが少なからず不満の声を上げた。もちろんクリントン大統領が任期を終え、共和党の大統領が誕生したという状況に合わせての処世術という側面もあっただろうが、少なくとも短期的に見れば、クリントンはほとんどの人に「良い思い出」を遺さなかったことになる。実際、本書で次々と論じられるクリントン夫妻の悪行は、利害関係のない一日本人である私が読んでもかなりひどいもので、ヒラリー・ロダム・クリントンが上院議員であり続けられるアメリカ政治の状況と比べると、日本の政治家たちもそんなに悪くはないなと思えてくるほどだ。

 クリントン大統領のテロリストたちへの甘い態度を批判していた著者が、テロリストの手にかかって死んだのは皮肉な結末だ。もちろん、クリントン大統領の恩赦の対象となったテロリストたちは、イスラム関係者ではなく、1980年代とそれ以前に反アメリカ的な事件を起こした、いまではアンファッショナブルとなった左翼/アナーキストたちである。本書では、ウサマ・ビン・ラディンの名前が一ヶ所だけ、瑣末なコンテキストで出てくる(20ページ。私訳)。

ビル・クリントンの頭の中では、政治的な深謀遠慮が、自らの国は言うまでもなく、法執行官たちの生死の問題よりも重きを占めているのである。大統領府の少なからずのメンバーが繰り返して述べてきたように、国内外のテロリズムは、米国の安全保障の中心的な懸念事項となっている。冷戦の終結以降、ティモシー・マクヴェイからウサマ・ビン・ラディンまでの何人ものとりわけ邪悪な脅威がソ連の侵略にとってかわったのである。

 しかしもっと皮肉なのは、2001年9月11日の事件のおかげで、多くのアメリカ人がクリントン夫妻の行状のことを忘れただろうということだ。3年後か7年後に、ヒラリー・ロダム・クリントンが大統領選挙に出馬できるような状況が生じていたら、改めてクリントン夫妻の政治的な生存本能が注目を浴びることになる。

2001/12/21

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