なぜ太平洋戦争になったのか

西洋のエゴイズムに翻弄された日本の悲劇

北原惇 / TBSブリタニカ / 2001/12/15

★★★★★

少々怪しいが興味深い

 著者は主にアメリカとヨーロッパで活動している人。本書は、日本が太平洋戦争に突入したプロセスを「社会心理学」的な観点から説明しようとする試みである。岸田秀の日米関係論(『日本がアメリカを赦す日』)と林房雄の『大東亜戦争肯定論』を融合させたという感じのもの。

 私は歴史の心理主義的な説明に対しては不可知論の立場をとるけれども、歴史のなかにいるわれわれが現状を理解するためのツールとしての効用はあると思っている。本書における著者のスタンスをまえがきから引用する。著者は、日本人の歴史認識において、「左翼/自虐史観」と「右翼/自由主義史観」(ただし著者はこれらの用語は使っていない)の典型的な2つの主張があると述べた上で、次のように書く(12ページ)。

筆者はこれら二つの極端に相反した見解以外に、別の見方もあってもよいと思う。日本は確かにアジアで侵略戦争を行い、南京で人々を虐殺し、朝鮮の女性を慰安婦として強制徴用した、と公式に認めなければならない、しかし日本がアジアでこのような行動に出た背景には、欧米の殖民主義と侵略主義の圧力という原因があったのである、とする見解である。
つまり、太平洋戦争にいたるまでの日本の殖民主義と侵略主義は、欧米の殖民主義と侵略主義に対決し、(1) 日本がその犠牲にならないために築き上げた軍国主義、(2) 強者としての欧米の威嚇と脅迫に対応するために心理的に欧米と同一視したこと、さらに(3) 欧米が日本に対してあからさまに示した人種主義、という三つの要素の組み合わせであったのではないだろうか。その意味では、日本をそうさせた欧米の殖民主義と侵略主義にまでさかのぼって考察しなければ太平洋戦争の原因は完全には理解できない。そしてそれは、歴史的には種子島に始まるのである。

 このような観点から、いくつかの重要なタイミングにおいて、外国からの圧力に対して日本人が見せた心理的反応を追跡していく。ただ、話が豊臣秀吉の時代から始まるので、個々の段階の記述はかなり少ない。特に太平洋戦争直前の時期は駆け足で通り過ぎているという感じがする。

 上記の極端な見解のどちらかを持っている人が読めば、現在のわれわれの位置を振り返るためのきっかけとなるだろう。なお、これはさきの戦争とそれに至る経緯に限った話ではない。『グローバル経済が世界を破壊する』の項に書いたことだが、日本人はグローバリゼーションについて語るときに、日本という国をグローバリゼーション(それが何であれ)の後進国として語ることが多いが、もちろん日本はこの分野では先進国なのである。『くじら紛争の真実』の項に書いたことだが、捕鯨推進派は西洋とは異なる価値観を持つ日本という像を出して、捕鯨をする権利を唱えることがあるが、おそらく大部分の日本人はすでにクジラを「聖獣化」しており、『フリッパー』も『フリー・ウィリー』も大好きなのである。

2001/12/21

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