大学サバイバル

古沢由紀子 / 集英社 / 2001/12/19

★★★

話題の広がりはある

 著者は読売新聞社の社会部で教育問題全般を担当している記者。本書は大学教育の現状をさまざまな側面から紹介するジャーナリスティックな本で、全般的に突っ込みが浅いものの、少子化の時代を迎えての大学の経営問題を巡る広い話題を取り上げている。事情通でない私にはいろいろと参考になった。

 50ページに「世界各国の学力比較」という見出しの表があり、日本の中高生あたりの学力は依然として高い方だという議論がある(もちろん「学力低下論者」は計測と解釈の手法にケチをつけるわけだが、それは措いておく)。それに関連した調査として、次のような紹介がある。

日本青少年研究所が九八年末から九九年初頭にかけ、米国、中国、韓国、日本の中、高校生を対象に行った国際調査では、「自分の成績は上か中の上」と答えた子の割合は、米国、中国、韓国の子に比べ、もっとも低かった。日本の中、高校生の場合、偏差値で分けたものと同じかと思えるほど客観的な分布を示した。これに対し米国は、約四割が「上か中の上」と答え、「中の下、下」と答えた生徒は一割以下と、際立ってポジティブな姿勢を示した。単一のものさしで学力を測られている日本の生徒たちの息苦しさ、閉塞感が伝わってくるように思えた。

 ところで、クリスティーナ・ホフ・ソマーズの『The War Against Boys』は、アメリカにおけるフェミニズム主導型の「ゆとり教育」("progressive education"みたいな言葉を使っている)を批判する本なのだが、使っているデータは少々古いものの(1990年代前半)、日本と米国の生徒の学力を比較して「日本の生徒はこんなに凄いのに、アメリカの学校は何をやっているんだ」と怒っている。そして、「自尊心」のギャップについては、アメリカ人の生徒が実力以上の自信を持っていることを批判し、実力相応のhumbleな自己認識を持っている日本人の生徒を誉めている。ちなみに、ソマーズの批判の対象であるジェンダー・フェミニストは、90年代において女子生徒の自尊心向上キャンペーンを行ったのだが、これと絡めて「アメリカは日本と比べて、学力の面では負けているが、自尊心の面では勝っている。勝っている部分をこれ以上伸ばしてどうするのか。このままではアメリカはどうなるのか」と嘆いている。

2001/12/21

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