どんづまり

Dead Heart,The

ダグラス・ケネディ / 講談社 / 2001/12/15

★★

習作ということだろうか

 『ビッグ・ピクチャー』『仕事くれ』のダグラス・ケネディが1994年に書いた作品。アメリカ人旅行客が、オーストラリアの文明社会から隔絶されたコミュニティに幽閉される。

 本の薄さからもわかるように、ワン・アイデアの習作である。現代を舞台にしているものの、1960〜70年代の近未来SF小説/SF映画のテイストがある。

 1997年にステファン・エリオット監督で"Welcome to Woop Woop"というタイトルで映画化されている(未見)。訳者あとがきには「ハリウッドの目にもとまり」とあるが、オーストラリアと英国の資本で作られているようだ。IMDBでの評価は低いけれども、実のところ、この映画は小説よりも面白いんじゃないかと想像している。正確には、どのように映画化しているのかなと想像する方が、小説を読むことよりも面白い。主人公にジョナサン・シェック、コミュニティの長にロッド・テイラーというのは適役っぽいし、主人公を誘拐する女性を演じているスージー・ポーターは、『エイミー』でベン・メンデルスゾーンの姉を演じていた人。まあ実際にはひどい映画になっているのだろう。

 外界から隔絶されたコミュニティで、ロジャーズ&ハマースタインのミュージカルのレコードが延々と再生されているというイメージが効果的に使われているものの、個人的にはあまり笑えない。というのも、私はまさに、そういうレコードを聴いて育ったからである。同時代の日本人が『仮面ライダー』とか『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌を聴いていたときに、私はブロードウェイ/ハリウッド・ミュージカルのサウンドトラックを聴いていた。本作では"Getting to Know You"などの曲がコミカルな意図で使われているけれども、それらの曲の歌詞をかなりのていどまで諳じている私は、かなり複雑な気分になるのである。

 これと関連して、私は『悪いことしましョ!』『イン&アウト』『私の愛情の対象』などの映画で示唆されている、「ミュージカルが好きな男はゲイである」というステレオタイプに物凄い違和感を覚える。『サウスパーク/無修正映画版』で示唆されていたような、「バーブラ・ストライサンドが好きな人間は変態である」というステレオタイプは認めてもよい(私はストライサンドが嫌いではないが、その感覚の背後に何らかの倒錯があることは認識している)。しかし、ブロードウェイ/ハリウッドのミュージカル一般は、ヘテロセクシャルな男女が鑑賞できるものである、と私は思っている。

2002/1/5

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