ロボットの心

7つの哲学物語

柴田正良 / 講談社 / 2001/12/20

★★★

構成が興味深い

 冒頭で「ロボットが心を持つことはできるか」という問いを提出し、これをパトナムやチャーチランドのような英米流認識論的現代哲学の流れの中で検討する啓蒙書。最後にクオリアの話を持ってくるのだが、ここの部分はかなり早足で、読者は煙に巻かれたと思うのではなかろうか。

 本書は、哲学の内容はともかく、個々の章の冒頭に載っている子供向け短篇SF小説のような小文が興味深かった。著者と編集者は明らかにこのような小文が読者の興味を惹き、理解を促進すると思っている。このような試みは啓蒙書によく見られるが(『無限論の教室』『哲学の最前線』など)、その手の文章を挿入したせいでかえってわかりにくくなっているという印象を与えることが多い。しかし本書の文章が独特なのは、文芸上の野心の気配を感じさせるところである。ティーンズ向けのライト・ノベルの書き手としてデビューしたいと言わんばかりだ。

 私はもちろんそのような要素は読者の理解を妨げると思っているが(哲学者は普通、問題の本質のみを的確に反映した例を作るために極限状況のストーリーを作るのだから、わざわざ文芸的なものを追加しない)、そのような試みがいくどとなく行われているところを見ると、ある種の人々には実際に効果があるのかもしれない。

2002/1/10

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