民族とは何か

関曠野 / 講談社 / 2001/12/20

★★★

理論的には面白いのだが、現実への適用が

 民族とは何かという問いに答えようとする本。

 既存の民族論・民族国家論が往々にして社会段階論みたいな形をとり、民族国家の誕生を歴史的必然のように論じるのに対し、民族には国家が先行し、国家間の競争と模倣によって民族が生まれるのだと述べ、最初の近代的な民族国家は英国だったが、その範例がヘブライ人だったとし、フランスは英国を模倣し、ドイツはフランスからの圧力を受けた、という流れを描く。そして、英国が民族国家たりえたのは当時の固有の条件によるのであり、他の国家は国家間の競争を通してそれを模倣するのだが、英国と同じ条件があるわけではないので、往々にして変なことになる。この視点は面白いのだが、結局はアドホックな説明を許す、ということであり、このことが現代の世界を論じるところで問題含みとなっているように感じた。

 特に現代の世界の状況を扱っている8章と、日本を扱っている9章では、正しい民族国家の要件があいまいであるために、著者の主観的な評価であるという感じが強くするし、何よりも悪いことに、正しくない民族国家が正しい民族国家になるためのロードマップが最後までよくわからない。

 8章と9章がなければ好印象だったかもしれないが、もともと著者はこれらの章を書きたかったのだろうから、まあどうしようもないということで。

2002/1/15

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