「無条件勝利」のアメリカと日本の選択

ロナルド・A・モース、日下公人 / 時事通信社 / 2002/01/10

★★

説得力に欠けるか

 ロナルド・A・モースが編著、日下公人が監修、時事通信社外信部ほかが翻訳、東京財団が企画編集協力となっている。日本は国家安全保障の面でいわゆる「普通の国」になるべきだという主張を補強する、さまざまなソースからの文章を集めた企画本である。2001年9月11日のテロ以前の文章も少なくないが、それ以降の状況も押さえている。

 昨年、やはり東京財団が関わった『日本の戦争責任をどう考えるか』を読んでかなりの圧迫感を感じたのだが、本書は別に大したことなかった。企画が成功していないということだろう。特に日本人執筆者が書いている第II部の質の低さが効いている。

 第I部には、日本はアジアの安全保障の面でもっと積極的な役割を果たすべきであり、アメリカもそれを望んでいる、という主張を補強するアメリカ人の文章がたくさん収められている。2001年9月11日のテロは、おそらくこの主張をさらに強化したものと思われる。

 日本側には、これに対抗しうるような強い勢力や言論は事実上存在せず、かろうじて自民党の「守旧派」が戦後リベラルの指針を守護しているという倒錯的な状況にある。クリントン大統領の時期の外交政策(の欠如)を描いた『War in a Time of Peace』を読んでいると、「アメリカの外交政策」を一枚岩のようなものとして論じることの危険を痛切に感じるのだけれども、少なくとも21世紀の最初の10年間は、この「普通の国」になれというプレッシャーが継続して加わってくるだろうと思われる。このとき、戦後左翼的な「アメリカの言いなりになっていてはいけない」という主張は、「いままで通りアメリカの保護下にとどまれ」という日米安保支持論となり、アジアの国々にちゃんと謝罪をして信頼を勝ち得るべきだ」という主張は、「信頼を勝ち得たら(または勝ち得たから)、アジアの安全保障にもっと貢献できる」という議論につながってしまうから大変である。戦争責任を償った国としてドイツをモデルにしている場合にはよけいそうなる。

2002/1/20

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