海外観光旅行の誕生

有山輝雄 / 吉川弘文館 / 2002/01/01

★★

トピックは面白いのだが

 「パック旅行」と呼ばれるようなガイド付きの団体海外旅行が日本で初めて行われたのは、日露戦争終結後の1906年、朝日新聞社が満州・韓国への団体旅行を主催したときだった。つまり、団体海外旅行はメディアが読者の注意を引き付けるためのメディア・イベントとして企画された。開催の時期が示唆するように、ここには帝国主義的な拡大を本格的に始めようとする日本人の世界に向ける視線が反映されていた。とまあ、そういう観点から20世紀初頭に行われたいくつかのメジャーな団体旅行を紹介する本。

 非常に興味深いトピックなのだけれども、この「帝国主義的な視線」とかそれに類した観念に囚われ過ぎている議論なので読むのがつらかった。商業的な旅行ではないが、第一次世界大戦時の地中海への遠征記録である『日本海軍地中海遠征記』に見られたような豊かな記述が、この「帝国主義的な視線」というつまらない視点のもとですべて捨象されていると思うと、残念でしかたがない。「観念の歴史」の悪い例である。

2002/1/27

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