Basket Case

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カール・ハイアセン / Knopf / 2002/01/01

★★★★

成功作ではない

 カール・ハイアセン(『トード島の騒動』『虚しき楽園』)の、2002年1月に出たばかりの新作。

 本作は著者にとっての新路線で、これまでの小説とは違って1人称の物語となっている。主人公はマイアミのローカルな新聞社に勤めている新聞記者。数年前に会社を買収したチェーンのオーナーに株主総会で歯向かったために、死亡記事を書く仕事を与えられている。その主人公が、かつてのロック・スターの事故死を調べていくうちに、謎に突き当たるという話。

 率直に言って、本作はあまり出来がよくない。ワイズクラックの中年男を主人公にした巻き込まれものハードボイルドといっていいような作りで、ストーリーの組み立てはかなり粗雑であり、同種のものと比べて決して高いレベルにはない。また、主人公への感情移入が前提となる1人称小説なので、それほど突飛なことをさせられないし、彼が出会う人々の中には奇矯な振る舞いをする人がいても、これまでのハイアセンの小説のように奇怪な人間が続々と登場するわけではない。

 ただ、私はこの人のファンなので、この新しい試みを少しは温かい目で見ようと思う。著者本人の考えが反映されていると思われる、アメリカの新聞業界の没落ぶり(まあそれも日本の状況と比べるとマシだが)に対する嘆きや、新聞記者の仕事の進め方の描写も興味深い。細かいギャグも読んでいて楽しいし、この人の根本的な楽天性にはやっぱりほっとさせられる。ただ、初期の数作で感じた衝撃は、もう二度とこの人の本からは感じられなさそうな気がする。

2002/2/11

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