この時代に想う

テロへの眼差し

スーザン・ソンタグ / NTT出版 / 2002/02/05

★★

まあ鼻持ちならないが

 著者が9/11事件の後に書いた3つの文章を収めた第I部と、それ以前に書いた4つの文章から成る、日本独自の企画本。ブッシュ大統領の"cowardice"という言葉の使い方を批判し、テロリストたちはむしろ勇敢だったと書いて非難を浴びた"The New Yorker"掲載の文章が収録されている。

 本書で特に興味深かったのは、1999年に朝日新聞に掲載された大江健三郎との間の公開往復書簡「未来に向けて―往復書簡」である。「行動する知識人」としてのスーザン・ソンタクの文章はときとして非常に嫌らしいものになるけれども、大江健三郎とのインタラクションの中で相対的にマシに見えるという効果が生じている。特に最終回のソンタクの文章は、これに大江健三郎はどう答えるのだろうかというようなスリリングな内容で、往復書簡がそこで終わってしまているのが実に残念だった。

 いくつも留保を付けつつも、包囲されたサラエヴォに長期滞在した経験のあるソンタグはNATOによるセルビア空爆を支持する。また、ドイツの緑の党に所属する外務大臣のヨシュカ・フィッシャーが、NATOによる軍事行動に参加したことを高く評価する。そして、NATOの行動とは性質がずいぶん異なるものとしながらも、「アジアの例証」として、ヴェトナムによるカンボジア侵攻がクメール・ルージュの支配を終わらせたことに肯定的に言及する。さらに、「コソヴォを前にしたドイツと同じ立場に日本は置かれることになるのです」というきつい言葉を記している。

 『いま、歴史問題にどう取り組むか』の項も参照。

2002/2/25

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