大学はどこへ行く

石弘光 / 講談社 / 2002/02/20

★★★

一橋大学長の立場からの報告

 著者(『環境税とは何か』は一橋大学の学長となって、「4大学連合構想」などの積極的な活動をしている。本書は、いまの日本の国立大学が置かれている状況を、学長というアドミニストレーティブな立場から解説する本。

 日本の大学の抱える問題を、大学の古い体質に由来するものだとして批判する、マーケット派とでも呼ぶべき改革論者である。東大総長の立場で書かれた蓮實重彦の『私が大学について知っている二、三の事柄』と比べると、立場の点でも文章の点でも明快である。いずれにしても、国立大学の長の立場にいる人が、大学の抱える問題を公にすることを目的とした一般人向けの本を書くということは、これまではめったになかったことだと思う。なお『大学サバイバル』は、ジャーナリストによる本。

 本書で特に良かったのは、独立行政法人化によって、どのようなポジティブな変化が見込めるかが明解に説明されていたことだった。この観点は、著者のような改革指向の学長という立場の人から説明してもらうしかないように思う。昨今のいわゆる大学改革には大学関係者からの反対の声もあるが、著者はこの改革を「上から下ろされてきた決定事項」として受け止める中間管理職として行動しているニュアンスが強く、本書には一般読者だけでなく大学の教職員というインサイダーを説得するという意図も含まれているだろう。ここで言う「上」とは、文部科学省と自民党(特に小泉内閣)であり、その背後には国民の意志があるということになるが、正直言って私には国民が大学についてどのように考えているのかよくわからない。ただし民間企業が、かつてのように社内教育にコストをかけられなくなって、大学に教育機関としての役割を本格的に期待するようになったのはたしかだろう。マーケットの審判なるものが、どういう経路をたどってクローズドな世界をこじ開けていくかがわかる例の1つということになるのだろうか。この影響がさらに下の教育機関に波及するためには、まだ相当の歳月が必要なのかもしれない。

2002/3/25

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