航空管制室

TRACON

ポール・マックエルロイ / 早川書房 / 2002/02/28

★★★

安直なミステリ

 航空管制官もののミステリ小説。著者は新聞の編集者出身で、綿密な取材をもとに安直な描写を行ったという感じのデビュー作である。

 映画メモでは、航空管制官ものの映画として『乱気流/グランド・コントロール』『狂っちゃいないぜ』を取り上げている。どちらも映画としてはそれほど出来がよくないが、航空管制官の仕事の描写は興味深い。本作とあわせて共通するテーマは、(1) 忙しい空港の航空管制官の仕事は、狂騒状態で行われる非常にプレッシャーの厳しい仕事である(2) 航空管制官の仕事はコンピュータが発達したいまも、人間の能力を使って行われるアートである、(3) レーガン大統領以降、予算が削減されていて、おそろしく旧式の機械を使っている、(4) 航空管制官は多かれ少なかれ気が狂っている、など。

 本作は有能な航空管制官を主人公に据えて、お手軽なエンタテインメントにアメリカの航空業界に対する辛辣な批判を盛り込んでいる。特にTCAS("Traffic alert and Collision Avoidance System"、「航空機衝突防止装置」と訳される)の信頼性に関して、その導入を積極的に進めているFAAと現場の航空管制官の間に生じている評価のずれが中心にある。TCASと航空管制官の指示のずれが原因で生じたインシデントとしては、2001年1月に起こった日航機のニアミスが記憶に新しい。

2002/4/1

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