9月11日の英雄たち

世界貿易センタービルに最後まで残った消防士の手記

Last Man Down: A New York City Fire Chief and the Collapse of the World Trade Center

リチャード・ピッチョート、ダニエル・ペイズナー / 早川書房 / 2002/03/31

★★★★

ちょっと疑問もあるが

 著者のリチャード・ピッチョートは、2001年9月11日の世界貿易センタービルの崩壊時にビルの中にいて生き延びた人のうちで最も階級の高い消防士(Battalion Chief、「大隊長」と訳されている)。本書は彼の当日の体験を描いた手記。訳本は2002年3月31日発行だが、原著は2002年5月7日に出版が予定されている。つまり、現時点で原著はまだ出ていない。

 著者は北タワーに登っていたが、南タワーが崩壊したことを知って全消防士に避難を命じる。そして残っていた民間人を連れて階段を降りている途中で崩壊に巻き込まれ、他の10人ほどとともに奇跡的に生き延びる。ちょうどビルの中央部にある階段の、地上から4〜8階あたりのスペースにいて、そこの空間だけが崩れずに残ったからだった。彼らはその日のうちに(ほぼ自力で)脱出に成功した。

 ドラマチックな話であり、面白い。現場に立った消防士の心の動きを描いているところも非常に興味深い。ただし、事件当時に著者がとった行動のいくつかは疑問含みであり、起こったことの記述の仕方については、いくつかの点で他の関係者から異論が出そうな気がする。著者本人も当日の自分の行動の正しさと適切さを完全には信じ切ることができず、いくつかの箇所で弁明口調になっている。

 なお、この生き残ったグループには、メディアで取り上げられて有名になったジョゼフィン・ハリスと第6はしご車隊(Ladder Company 6)のメンバーが含まれている。この消防士たちは、障碍のせいで階段をゆっくりとしか降りられなかったジョゼフィン・ハリスに付き添っていたおかげで命拾いをしたと考えており、彼女を守護天使と呼んだ。本書の著者は、この第6はしご車隊のリーダーであるジョン・ジョナスについていくぶん批判的な記述をしており、両者の間に生じたテンションがいまでも解決されていないことがわかる。

2002/4/1

 当時の北タワーのロビー内の様子を捉えたドキュメンタリー映画、『9/11』を見た。消防士たちがどのように混乱していたかがよくわかる映像である。また、HBOのドキュメンタリー『In Memoriam』では、第6はしご車隊の隊員2名がインタビューに応えている。

2002/10/20

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