I'm a Stranger Here Myself

Notes on Returning to America After Twenty Years Away

I'm a Stranger Here Myself

ビル・ブライソン / Random House / 1999/01/01

★★★★

途中までは良いのだが

 長らく英国に住んだ後に母国のアメリカに帰った著者は、帰国後の新鮮な体験を描くエッセイを英国の新聞に英国人読者向けに連載した。私が読んだのは、これらのエッセイをアメリカ人読者向けに編集しなおしたエッセイ集のペーパーバック版である(ややこしい)。なお、2001年に『ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー』というタイトルで訳本が出ている。

 著者はユーモア精神に支えられた鋭い文章の書き手として知られるが、本書は「新しいアメリカに帰ってきた古いアメリカ人」というスタンスを取っているがゆえに、『Dave Barry Does Japan』のデイヴ・バリーと同じように、素朴な中年アメリカ人男性の自虐的ギャグというジャンルに収束せざるをえない。特に後の方になると、書くことが尽きたのか、身辺雑記風のオヤジ・ギャグが多くなってかなりつらくなる。この読書メモで取り上げたものでいえば、林望(『リンボウ先生のへそまがりなる生活』)とか土屋賢ニ(『棚から哲学』)などのニッチに近い。もちろん、これらよりは数段マシだけれども。

 現代アメリカの狂騒的状況と、それと対置される「古き良きアメリカ」の像についての記述は興味深いものの、これに類するエッセイは他にいくらでもあるとは言える。本書で特に印象に残ったのは、著者が移り住んだニューイングランド(ニューハンプシャー州)の四季と自然についての描写だった。アメリカ中西部で生まれて育ち、後に英国のイングランドに長く住んだ著者にとって、アメリカ東部のニューイングランドの自然環境はまったく新しい体験である。それはアメリカ人である彼にとっても郷愁の念が呼び起こされる、アメリカのアーキタイプの1つを体現する環境であり、ニューヨーク・シティから移住した人であっても同じように新鮮な体験ができただろう。日本にもよくある「田舎暮らし本」である。そして、この部分でかえって著者のエッセイストとしての力がわかるというわけだ。

 しばらく後に紹介する予定の、林業についての本と関連して。ニューハンプシャーは、巨大なジェット機が墜落して「行方不明」になるぐらいの広大な森に覆われており、森の中の散歩を趣味としている著者は、この失われたジェット機が偶然に見つかるのではないかという淡い期待を抱くのだが、それと同じように彼が見つけたいと思って見つけられないでいるのが、つい100年ほど前には普通に栄えていた村なのである。もともとその地域は大きな農業地帯で、畑の中に小さな村が点在していたのだが、都会への人口流出のせいで村に人がいなくなり、跡地を見つけようと思っても見つからないほどにまで森に覆われてしまった。この土地の気候条件はもちろん効くけれども、森林の回復力がいかに強いかを思わせるエピソードである。

2002/4/8

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