日本の森はなぜ危機なのか

環境と経済の新林業レポート

田中淳夫 / 平凡社 / 2002/03/20

★★★★★

面白い啓蒙書

 著者は『「森を守れ」が森を殺す』『伐って燃やせば「森は守れる」』の人。本書は、これらの本と基本的に同じ路線だが、説明が整理されていて一般読者に勧めやすい内容になっていると思う。ポジティブな側面に目を向けて、前向きな解決策を探っていこうとする態度も好ましい。

 中心にあるのは、日本の林業に「持続可能な開発」の論理のさまざまなツールを適用しようという発想である。これを林業に関わるさまざまな領域に適用する方法を検討し、具体的な活動の紹介と提案を行っている。

 冒頭から、日本の森林は太平洋戦争後の林業のおかげで急速に回復したのであり、その意味で林業は成功を収めたと言えるという、なかなか挑発的な主張が展開される。もちろん話はそれほど簡単ではなく、行った投資を回収する前に国内材ブームが終わったために、1回も収益を上げることもなく放置されている森林もこれには含まれる。これは別の見方をすれば森林破壊の輸出であり、国外から見ると、日本は国内の森林資源を使えないような経済条件を作り出すことによって、国外の森林資源を搾取しているという風に言われかねない事態でもある。逆に言えば、木材の輸出国にしてみれば、日本国内の経済条件はその国にとってのアドバンテージなので、その経済条件が変化しないことがどちらかといえば望ましい。トヨタがフォードの効率上昇をとりたてて望まないであろうことを考えればよい。

 このように一筋縄では行かない問題だけれども、森林資源は日本が持続可能な利用を行える可能性が高いという点で、鉱物資源よりはずっと見込みがあると言えよう。主に鉱物・石油資源の持続的利用を論じている『リサイクル幻想』の著者は、これらの資源の将来の見通しについてかなりペシミスティックで、鉱物・石油資源が枯渇した状況で世界経済が混乱し、日本は経済活動の規模を落としながらも、リサイクルによって他の貧しい国よりは豊かに生活するというような像を想定している。そのような状況では日本の林業の競争力も高まるに違いない。

2002/4/15

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