The Good, The Bad & The Difference

How to Tell Right From Wrong in Everyday Situations

The Good, The Bad & The Difference

Randy Cohen / Doubleday / 2002/03/01

★★★

力不足か

 New York Times紙の"Everyday Ethics"という連載コラムの単行本化。日常的な場での倫理・道徳についての人生相談のコラムである。著者は"Late Night with David Letterman"や"The Rosie O'Donnel Show"などのTV番組の脚本家出身で、そのことからわかるようにかなりリベラルな立場に立っている。

 「友人の夫が見知らぬ女性と一緒にいるところを見かけたが、そのことを友人に話すべきか」、「陪審員審査に呼ばれたのだが、私は死刑に反対であり、そのことを正直に述べると排除されてしまうのは明らかなのだが、正直に言うべきか」、「持ち込み禁止をうたっている映画館にスナックや飲料を持ち込んでもいいか」といった、現代アメリカ人が日常生活の中で遭遇する問題を読者が手紙で寄せてきて、これにリベラル寄りの、しかし常識的な立場から倫理的判断を下すという試みである。このような問題に真っ向から取り組む姿勢は好ましいのだけれども、ギャグがあまり面白くないということと、原理主義的にならないように丁寧に取り組んでいるせいで回答がアドホックに見えがちになるという欠点があった。私にとっては、著者の回答よりも、質問の内容の方が、現代アメリカ人の抱えている悩みがわかって興味深いことが多かった。

 1つぐらい例を挙げておこう。83ページの"Free Chair to Prop Guy"と題されたセクション(翻訳は引用者による)

私は映画の小道具として、とあるお洒落な家具会社から椅子を借りました。映画が公開されたとき、その会社は一番高価なモデルの1つを「感謝の気持ち」として私に送ってきました。仕事はもう終わっているので、賄賂とは言えません。椅子をもらっておいてもいいでしょうか?
-匿名

あなたはきっとこの答えを気に入らないでしょうから、腰を下ろして聞いてください。ただし自分で金を払った椅子に。買収は、直接的な見返りというような下品なものがなくても成立します。政治家は、お返しとして具体的な恩恵を施さなかったという理由で、自分の受けた接待や贈り物を正当化するかもしれませんが、このようなものは無意識的にせよ将来への期待を生じさせます。あなたはその家具会社を二度と利用しないかもしれませんが、将来、小道具を選ぶときには、何らかの同じように心地よい「感謝の気持ち」が郵便受けに届くかもしれないという可能性に判断が左右されることになるでしょう(郵便受けがとても大きいか、椅子がとても小さいとして)。
清廉潔癖な世界では、演劇批評家は役者を1人も知らず、防火設備の検査員は1人の家主にも会わず、スキーヤーを死なせた軍隊のパイロットは、軍人ではなくスキーヤーから成る陪審団の前で裁かれるでしょう。このように厳しい隔離措置を望むのは無理ですが、遡行的な買収を防ぐのは簡単です。自分の金で椅子を買って、正しい姿勢と安らかな心を楽しんでください。

 まあ、こんな感じのギャグと回答である。質問によっては、他の回答者の異なる回答を並記したり、読者との間での議論を掲載したりもしている。そうすると、これが本質的に法廷弁護士の議論(argument)と同じものであることがわかってしまう。考えてみれば、陪審員はまさに市民的倫理観によって判断を下すことが求められているのだった。

2002/4/15

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