TOEFL・TOEICと日本人の英語力

資格主義から実力主義へ

鳥飼玖美子 / 講談社 / 2002/04/20

★★★

実用書ではない

 著者は、通訳者としての実務経験を活かして、英語教育や異文化交流に関する著作活動を行っている人(『ことばが招く国際摩擦』)。本書は、昨今の英語学習ブームの再来を踏まえて、TOEFLやTOEICなどの各種の英語試験の性質を、受験者と利用者(企業や学校など)の両方の観点から解説する本である。

 私はこのタイプの試験に関心がなかったので、いろいろと新しい知識を得ることができた。関心のある人にとっては当たり前のことばかりかもしれないが、試験の受験者だけでなく、そのスコアを人事や採用に利用する「ユーザー」向けの解説に重点が置かれているのが面白い。

 日本人のTOEFLのスコアが低いことの説明として、日本人の受験者数が多く、「腕試し」として受けている人が少なからず含まれているという議論がなされることがあるが、著者は日本の若い世代(16〜22歳)のスコアが低く、全体の平均値の足を引っ張っていることを指摘し、1990年代から始まったコミュニケーション重視の英語教育のせいであると述べている。これは「ゆとり教育批判論」を支持する実証的な証拠で、30代のスコアが高いのは(それでも中国や韓国と比べると見劣りがするが)従来の文法重視教育の名残りであると考えられる。この説が正しいかどうかは、今後のTOEFLスコアの変遷を見ていけばいいわけだ。学校を出た人が継続的に受けるようなテストが存在する科目は英語だけなので、貴重な判断資料になる。

2002/4/30

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