日本の危機の本質
逆襲の国家戦略
副島隆彦 / 講談社 / 98/06/08
★★★
この文章はなんとかならないものか
日本経済の動向と、アメリカの国内政治を関連付けて論じようという趣旨の本。日本のメディアでは、アメリカの民主党と共和党の性格が正しく伝えられていない、と指摘し、日本の問題はアメリカ国内の政争に使われているのであり、日本人は共和党の保守派と連帯すべきだと主張する。が、しかし、目敏い日本企業はかなり前からそれをしているのでは? たしか自動車貿易をめぐる日米摩擦あたりから強力なロビイングを行ってきたはずで、これはまさに共和党保守派をターゲットとした活動だった。そういえば最近では民主党に対する中国のロビイングが共和党の政争の道具となっている。
経済関係の細かい議論については、私に知識がないために妥当性が判断できないけれども、全体的な論調について言えば、21世紀日本のナショナリズムはこういう形を取るんだろうという感じ。293ページあたりに「新しい歴史教科書をつくる会」への好意的な言及があり、これを冷戦後の全世界的なナショナリズムの動きに関連付けて論じ、イスラム原理主義運動と重ね合わせているあたりは、正しい着眼点だと思う(好意的な評価に同意するかどうかはともかく)。
それにしても、師匠の小室直樹にも言えることだが、なぜこうも、信頼性というものを醸成しない文体なんだろうか。なにか私の知らないどこかに、こういう文体を尊重する文化があるのだろうか? 日本製ミステリとかカッパ・ブックスの読者層とかに?
1998/7/10