腐海

Sea Change

ジェームズ・ポーリック / 徳間書店 / 2001/06/30

★★

科学風味ロマンス

 著者は現役の海洋学者/生物学者とのこと。『川が死で満ちるとき』の主題であった渦鞭毛藻類の、突然変異して凄いものになったやつが、カナダ西部と米国北西部の海岸地帯を襲うというバイオ・ホラー。

 生物そのものの設定は空想科学小説的だが、これに対処する科学者たちとテクノロジーの設定はリアリスティックで、物語はバカ。要するに、SF好きの科学者が書いた小説の典型ということだ。ジョージ・クルーニーが映画化に関心を抱いている、と聞けば、その水準がわかるだろう。翻訳がロマンスっぽいのも、話の安っぽさに拍車を掛けている。

 本書を読んで、この生物に関心を抱いた人には、ぜひ『川が死で満ちるとき』を読むことをお勧めする。本当の話であるだけに、たぶん本書よりも怖い。

 なお、このところ気になっていることなので、この機に書いておく。翻訳者の代替わりが進行中なのか、本書のようなニッチの小説で、ロマンス文体/ノヴェルス文体/日本製小説文体とでも呼ぶべき、読むに耐えない翻訳が増えてきたように思う。これは自分勝手な言い方であり、もうちょっと客観的な表現をすれば、昔から批判されることの多かった「翻訳文体」なるものの崩壊の兆しなのだろう。

 私が1990年代頃から日本の小説をほとんど読まなくなったのは、文体を生理的に受け付けないからという理由が大きい。このまま事態が進むと、翻訳小説も読めなくなる日が来るかもしれない。

2002/5/10

TRCの該当ページへ

amazon.comの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ