ブラックホーク・ダウン

アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録

Black Hawk Down: A Story Of Modern War

マーク・ボウデン / 早川書房 / 2002/03/15

★★★★★

強力な戦争ノンフィクション

 1993年10月にソマリアで行われた米軍の作戦行動を記録したノンフィクション。1999年に『強襲部隊』というタイトルで発行されていたものが、リドリー・スコット監督の映画『ブラックホーク・ダウン』の公開に合わせて改題され、文庫化された。ちなみに本、映画ともに、「ブラックホーク」に中黒はない。

 これは戦争ノンフィクションの大傑作。1993年10月3日、米軍はソマリアの武装組織アイディド派の幹部を拉致するために、首都モガディシュに特殊部隊を送り込む。本来ならば1時間ほどで終わるはずだった任務は、計画の不手際から泥沼にはまり、米軍兵士たちはモガディシュ市内で市街戦を繰り広げ、孤立しながら一夜を過ごすことになる。本書は、この戦闘の経過を、個々の兵士と現地のソマリア人の視点を通して再構成していく。

 映画はソマリア人の視点をほぼ完全に排除し、ハリウッド・スターが演じる「ヒーロー」を作るためにストーリーをいくらか変えている。逆に言えば本書の内容は、リドリー・スコットとジェリー・ブラッカイマーがアメリカ製の娯楽戦争映画にそのまま流用できるようなものではない。弱腰の政府、指揮官の判断ミス、レインジャー部隊の練度の低さ、米軍兵士が行った疑問の残る殺戮行為、ソマリア人の側から見た米軍の横暴さなどを率直に描いているのである。

 この戦闘で、米軍側は18人の死者と数十名の重傷者を出したものの、ソマリア側の死者は500人以上に達しており、当初のミッション、すなわちアイディド将軍の副官を拉致するという目標は達成された。著者は自分の見解として、また参加した兵士たちの意見として、この作戦行動は軍事的には成功だったと述べている。これはもちろん、ソマリアへの派兵が政治的な失策だったというコンセンサスに対するアンチテーゼである。一方、興味深いことに、すでに述べたようにこのストーリーを「ハリウッド化」した映画の方は、政治的ニュアンスを消して戦闘のみを取り上げているのに、「成功」という印象をほとんど与えない。

 「特殊部隊」一般を扱っている『暗闇の戦士たち』には、この事件についての言及があった(ただし、良い本ではないので勧めない)。また、デイヴィッド・ハルバースタムの『War in a Time of Peace』は、クリントン政権の初期の失策という文脈で、この件に言及している。『ソマリア ブラックホークと消えた国』は、2002年の時点でのソマリアの状況を描いた本(勧めない)。

2002/5/19

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