共感覚者の驚くべき日常

形を味わう人、色を聴く人

The Man Who Tasted Shapes

リチャード・E・シトーウィック / 草思社 / 2002/04/20

★★★

トピックは面白いが

 著者は神経科の医師で、共感覚研究の第一人者として知られているとのこと。

 共感覚(synesthesia: シネスシージア)とは、音を聞くと色が見えるとか、味から物の形が感じられるなど、五感が入り混じる現象のこと。19世紀後半から20世紀前半にかけて関心が持たれていたものの、それ以降は忘れられていたこの現象に、著者は1980年代に入って関心を持ち、局所脳血流を測定することで、それが本人の脳の中で実際に起こっている現象の反映であることを証明する。

 非常に興味深いトピックなのだが、本書は残念ながら本としてはあまりお勧めできない。まず執筆時期が1993年と、日進月歩の分野(あるいは少なくともそのような分野の隣接分野)では少々古い。また、著者のライティング・スキルがあまり高くなく、フィクション風の記述がこのような科学的なトピックを扱うのに適していない。最後に、本の半分ほどが、人間の精神活動における「情動」の重要さに関する思索的エッセイで占められていて、読むのがつらい。

 Google DirectoryのSynaesthesiaのページ。凄い量のリソースで、一種の「ブーム」になっていることが窺える。。

 Synaesthesia Webring。共感覚者がけっこういる。

 文字に色が付いて見えるという"chromatographemic"のsynaesthesiaを持っている人のページ。面白い。

 自己申告の「共感覚者」の中には、勘違いも少なからず含まれていると思われる。しかし、本当の共感覚とそうでない共感覚の区別が可能かどうかは、究極的には、哲学の問題になりそうだ。なお、私はいかなる共感覚も持っていなさそう。

2002/5/25

TRCの該当ページへ

amazon.comの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ