膨張する中国 呑み込まれる日本

趙宏偉 / 講談社 / 2002/04/26

★★★★★

論争的な中国論

 著者の名前は「ちょう・こうい」(HongWei Zhao)と読ませている。この人は、面白かった『一つの中国 一つの台湾』の共編訳者で、名前が記憶に残っていた。

 著者は中国政治と東アジア国際関係を専門とする政治学者。本書は一般向けの著書としては初めての本のようだ。序文に「逆さまに見てはじめてわかる異質な中国」というタイトルをつけていることからわかるように、中国についての定説にあえて反論をぶつける論争的な本。この反論は別に前代未聞の奇説というわけではなく、あくまでも素朴な定説の一つ裏を行くというもの。ただし、著者の挑発的な文章には底知れぬ迫力があって面白い。

 最終章「民主主義の中国ほど恐ろしい国はない」からちょっと引用する。著者は、中国が近い将来、民主主義国家になることは不可避であるとして、次のように述べる(229ページ)。

米軍は、もはや東アジアでは不要な存在であり、朝鮮半島や沖縄などからパールハーバーへの撤退を余儀なくされているはずだ。アメリカは東アジアの主導権を中国に奉還し、民主中国は名実ともにアジアの盟主となる。
一方、中国の時の指導者は、今日のジュニア・ブッシュと同様に支持率を気にするあまり、国民や世界中に散らばる華僑の顔色をうかがうことになる。「民主」や「文明」を世界中に布教する宿命を背負わざるをえなくなり、事あらば「世界の警察官」として世界の果てにまで大軍を派遣して、気に入らない輩をやっつけることになる。しかも、米軍とは異なり、地上戦をまったく恐れない人民解放軍の大軍を、である。

 たしかに中国は、世界の非常に多くの国と場所に、華僑という形でのナショナル・インタレストを持っている。そして中国が民主化していれば、(1) 華僑は母国の政権をいま以上に近しいものと感じるだろうし、(2) 中国による他国への介入に反対する国際世論も弱くなるだろう。まあ、こういう感じで著者は読者を挑発しているということで。

2002/5/25

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