〈標準〉の哲学

スタンダード・テクノロジーの三〇〇年

橋本毅彦 / 講談社 / 2002/03/10

★★★

興味深い話だが

 標準、すなわちstandardsの技術史。19世紀後半にヨーロッパ人を驚かした「アメリカン・システム」の解説から始まり、ネジという具体的な部品の標準化の歴史を述べ、テイラーの業績、米国における標準化運動、そして現代のISOなどの標準化団体と、きれいな構成になっている啓蒙書である。

 個人的には、最初の2つのトピックは面白かったが、それ以降は少々物足りなかった。たぶん技術畑の人は似たような印象を抱くのではないかと思うのだが、テイラー以前は「歴史」であるのに対し、テイラー以降は現在に直結した話であり、そこで取り上げられるさまざまなトピックは「技術史」と呼ぶほどでもない普通の技術論でよく取り上げられている。そして、標準の「哲学」という面については、実際の仕事に標準を使っている人々の方がずっと具体的かつ深いことを考えていそうな気がする。

 なお、「アメリカン・システム」の話の概要をメモとして書いておく。標準化は、18世紀のヨーロッパにおいて軍事上の必要性から始まった。これは啓蒙主義思想を背景とした合理主義である。ところが、ヨーロッパではこれをベースにした大量生産体制を確立することができなかった。その背後には伝統的な職人からの反感などの要因がある。ところが、ちょうどこの頃アメリカでは、植民と生産を急速に拡大していて、むしろ人手不足が問題になっていた。そういうわけで、互換性のある部品をベースにした大量生産の体制が、アメリカですくすくと育っていき、19世紀半ばになってヨーロッパに逆輸入されることになる。

 既得権益と既存のインフラストラクチャがないところで、新しい産業が伸びる、というケースである。

2002/6/3

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