なんでやねん

辻元清美 / 第三書館 / 2002/05/15

★★

果たして弁明になっているのか

 TRCのデータベースで検索すると、1994年以降に『なんでやねん』というタイトルの本は4冊出ている(1冊は『なんでやねん!?』)。著者はピースボートの設立者。社民党所属の衆議院議員となったが、公設秘書の給与を不正に使用していた件を追求されて、2002年3月26日に辞職した。本書は弁明の書である。

 私はまったくフォローしていなかったので事情に疎いのだが、どうやら自民党議員の鈴木宗男に対する攻撃で注目されていたところだっただけに、このスキャンダルのダメージが大きかったということのようだ。本書での本人の弁明を信じるならば、この「不正」は国会議員の公設秘書の制度の硬直性を回避するためにやった「ちょっとした工夫」であり、そんなに騒ぎ立てるほどのものでもない。私には議員辞職のきっかけになるような話には思えなかった。それだけに、なぜ辞職したのかが気になる(敢えて言えば、ね)。

 著者は、3月20日の『週刊新潮』の記事を受けての記者会見で、政策秘書の給与が全額当人に渡っていたという「嘘」をついた。このことが政治的なダメージになって、支持者からも「これで辞めないのは潔くない」というような声があがったという。それで思ったのは、政治家が「メディア・コンサルタント」を雇っていないことの悲劇だった。このタイプの人を雇うことには、倫理上のさまざまな問題点があるだろうけれども、少なくともこのケースは、本人が記者会見をする前にコンサルタントとちょっと話をするだけで防げたはずである。考えてみれば、著者の辻元清美はメディアにはほとんどの場合「頭の弱い人」として登場していた。これが本人なりのメディア戦略だったのだと思われる。「清美ちゃんって、テレビで見るとアホやけど、ホンマはけっこう利口なんやで」という意外感を武器に、か弱い女性が業界の古狸に果敢に立ち向かっていくというイメージで、熱心な支持者を得ていたのだろう。実際、本書に掲載されている本人の手による(事件が起こる前の)各種エッセイは、別に凄いというわけではないが、最低限の利口さを持っていて意外感があった。

 それに比べて、今回のスキャンダルを弁明する文章は総じて歯切れが悪く、たしかに痛いところを突かれたのだなという印象を与えている。

 私は別にこの人にも社民党にも投票していないので、議員辞職については何も言う気が起きないが、今回の件については「そんなに騒ぎ立てるほどのものでもない」という印象を受けている。逆境に負けず復帰してもらいたいものだ。

2002/6/3

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