批判的想像力のために

グローバル化時代の日本

テッサ・モーリス=スズキ / 平凡社 / 2002/05/24

★★

中途半端リベラル

 タイトルからして「この本はダメですよ」と言っているような本だが、やはりダメであった。著者は英国生まれ、現在はオーストラリア国立大学教授。日本経済史、日本思想史を専門とする、「ポストモダニズム」、「カルチュラル・スタディーズ」系と思われる学者。

 1990年代後半から2001年にかけて、『世界』や『思想』などに掲載されたエッセイをまとめたもの。本人は英語で書いているものと思われる。さまざまな時事的問題についての「ポストモダン」風の言葉遊び。

 ただし、話はときどき興味深い領域へと接近する。英国、オーストラリア、日本という3つの国に深く関わっている(たぶん)白人が、日本の1990年代以降の「自由主義史観」のナショナリズムを、リベラルの立場から批判するという、そうとう微妙な立場である。こうやって発言をする勇気は認めなくてはならないだろう。たとえば著者は、日本の問題を論じるにあたって、英国の立憲君主制、1990年代以降のオーストラリアのレイシズム的な動きなどを、自分に関係のある問題として例にひいてくる。ただ残念なことに、面白い話になりそうな一歩手前で、安全な領域へと退却しているという印象がある。

2002/6/3

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