殺しのリスト

Hit List

ローレンス・ブロック / 二見書房 / 2002/06/25

★★★★★

円熟

 短編集『殺し屋』の「殺し屋ケラー・シリーズ」の初長編。本作は、小出しにしていた短編をつなぎあわせて1つの長編にしたものらしく、全体的なバランスに少々おかしいところがあるのだが、それがかえって一直線でない複雑な雰囲気を与えるという効果を生み出している。

 本作で、殺し屋のジョン・ケラーは冒頭で危機に遭遇し、最後になってそれを克服するのだけれども、その途中での紆余曲折にははなはだしいものがある。物語の始まりと終わりは、たぶん1年以上の期間を隔てているが、その間の大半の時間を、ジョン・ケラーは普通の生活人として過ごしている。殺し屋(あるいはその他の特殊な職業の人)を主人公にした物語は、その職業に固有の活動をしている場面を描き、それ以外の生活の場面は省略するのが普通だろう。しかし本書では、殺しの場面はあっさりと終わり、それ以外の、切手を買ったり、市民としての義務を果たしたり、占い師のサービスを受けたりする場面の方がじっくりと描かれる。実際、ジョン・ケラーの殺し屋としての仕事は、実時間ではかなり早く終わるわけだから、本書の描写は現実の比率を正しくマッピングしたものだと言える。

 こんなことは地位を確立した作家にのみ許されることであり、ローレンス・ブロックはそれを見事にこなしている。そのせいでamazon.comのカスタマ・レビューでは不評を買っているが、私は素直に感動した。非常に面白く、エキサイティングだったと言っておく。

2002/6/10

TRCの該当ページへ

amazon.comの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ