ミイラはなぜ魅力的か

最前線の研究者たちが明かす人間の本質

Mummy Congress,The

ヘザー・プリングル / 早川書房 / 2002/05/31

★★★★

個々のエピソードは面白い

 考古学、人類学の分野を専門とする科学ジャーナリストが、ミイラ研究について行った取材をまとめた本。章ごとに異なるトピックを取り上げている連作エッセイのようなものである。

 本書を読んだかぎり、ミイラができる、というか死体が長期保存されるメカニズムにはいくつかのパターンがあり、細かいことはまだよくわかっていないようだ。(1) われわれが「ミイラ」という言葉から連想する、エジプトを代表とする人造のミイラ。内蔵や脳を取り除くなどの処置を施した後に、何らかの化学物質を重ね塗りして、外気から遮断する。(2) 北ヨーロッパの沼地などでできる自然のミイラ。人工的な処置を施さなくても、タールなどの物質がある沼地に死体が沈むと、自然に保存される。(3) 乾燥地帯でできる自然のミイラ。砂漠などの乾燥地帯であれば、そのまま死体が保存される。(4) 山の上などの低温地帯で保存されるミイラ。気温が低ければ冷凍されて保存される。その他、20世紀以降の現代的なテクノロジーを使った死体保存の試みも行われている。

 その他、ミイラ研究には予算が下りにくいので、研究者は副業としてやっていることが多いという事情。欧米におけるミイラの観念史。カトリック教会の「インコラプティブル」(現在では、聖人の条件とはなっていないとのこと)。考古学・人類学研究一般について言えることだろうけれども、レイシズムとのかかわりのポリティカル・コレクトネスの観点から、ミイラをもとにした人類学研究がやりにくいという事情、などのトピックがある。いずれも興味深い話だが、連作エッセイという感じなのでちょっとヌルく感じられるかもしれない。

2002/6/10

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